スイス進出におけるリーガルリサーチの重要性:カントン法と連邦法の二重構造
欧州の中心に位置し、高度な経済水準と安定した政治基盤を持つスイスは、グローバルな事業展開を図る企業にとって魅力的な市場です。しかし、スイスでビジネスを成功させるためには、現地の複雑な法制度を正確に把握し、適切なコンプライアンス体制を構築することが不可欠です。スイスの法体系は、日本のような単一国家の法制とは根本的に異なり、連邦、26のカントン(州)、および約2000の基礎自治体(コミューン)という3層の権限構造によって成り立っています。事業内容によっては、スイス全土に適用される連邦法だけでなく、特定のカントンが独自に定める条例や規制が強く影響する分野が多数存在します。
特に、不動産の取得、祝日・休日設定をはじめとする労働環境規制、そして環境保全に関わる法制度においては、カントンごとのルールの差異が事業展開に影響を与える場合があります。したがって、進出予定地に応じたリーガルリサーチが重要です。本記事では、スイスの法律調査において避けては通れない連邦法とカントン法の二重構造の実態を詳細に紐解き、欧州圏でのビジネス展開において留意すべき法令や制度、手続きについて解説します。
スイスの法律調査の前提となる連邦法とカントン法の権限分配
スイスにおける法律調査に着手する際、最初に理解しなければならないのは、スイス特有の権限分配のメカニズムです。スイスの政治および法構造は、歴史的な背景に基づく高度な地方分権と直接民主制を特徴としています。日本の法体系では、国家の立法権は原則として国会に独占されており、都道府県や市区町村が定める条例は、国の法令の範囲内においてのみ制定可能であるという厳格な中央集権的単一国家体制が敷かれています。これに対し、スイスでは各カントンが「構成国」として機能しており、それぞれが独自の憲法、議会、政府、および裁判所を有しています。
スイス連邦憲法のもとでは、連邦政府の権限は必要不可欠な領域に限定してカントンから委譲される形をとっており、憲法で明示的に連邦の権限と規定されていない事項については、すべてカントンに主権が留保されています。このようなボトムアップ型の権限分配メカニズムは、スイス全土で均一な事業活動を展開しようとする企業にとって、法律調査の複雑さを高める要因となっています。
以下の表は、日本とスイスにおける法構造および権限分配の基本的な違いを比較したものです。
| 比較項目 | 日本の法体系(単一国家体制) | スイスの法体系(連邦国家体制) |
| 主権の所在 | 国家(中央政府)に集中 | カントンに主権が留保され、一部を連邦に委譲 |
| 地方政府の性質 | 地方公共団体(都道府県・市区町村) | 構成国としてのカントンおよび基礎自治体 |
| 立法の優越性 | 国の法律が条例に対して絶対的な優位を持つ | 連邦法が優先される領域と、カントン法が専権を持つ領域が厳格に分かれている |
| 司法制度 | 全国統一の裁判所制度(最高裁・高裁・地裁等) | 連邦裁判所のほか、各カントンが独自の裁判所システムと民事・刑事手続きの細則を持つ |
| 外交的権限 | 中央政府が独占 | カントン独自の権限範囲内で外国との条約締結が可能(連邦法に反しない限り) |
このように、スイスのカントンは自らの権限の範囲内において外国との間で条約を締結することができ、独自の外交的権限を有しています。日本の都道府県と比較すると、スイスのカントンは高い自律性と独立性を有しています。そのため、スイスにおいてビジネスの拠点を設置する際には、連邦法を調査するだけでは不十分であり、事業を展開する各カントン、さらには基礎自治体の現地法令や手続きを個別に精査するリーガルリサーチが求められます。
加えて、スイスでは住民投票を通じて市民や地域社会の意向が迅速にカントンの法令に反映される傾向があります。この結果、法令の頻繁な改正や規制の変更が発生しやすく、最新の法改正動向を継続的にモニタリングする法務体制の構築が重要になります。
スイスの不動産取得とレックス・コラー規制におけるリーガルリサーチ

外資規制と連邦法による免除規定の厳格性
企業がスイス国内にオフィスや店舗、工場などの拠点を設立するために不動産を取得する際、必ず直面する法規制が「レックス・コラー(Lex Koller)」と呼ばれる、外国人および外資系企業による不動産取得規制法です。日本の法律では、外国人や外国法人による不動産取得について、国籍や資本に基づく制約は原則として設けられていません。しかし、スイスでは国土の面積が限られており、環境保護や不動産価格の高騰を防ぐ観点から厳格な外資規制が敷かれています。
スイス国内に居住していない外国人、外国に本店を置く企業、あるいはスイス国内に法人を設立していても実質的に外国資本の支配下にある企業がスイス国内の不動産を取得する場合、原則として管轄するカントン当局からの特別な認可が必要となります。この規制の存在を知らずに不動産取引を進めると、契約が法的に無効となるおそれがあります。
取得可能な不動産の規模についても、連邦法によって厳格な基準が設けられています。原則として、居住可能な部屋を含む純床面積と敷地面積には上限があり、これを上回る取得は容易ではありません。
| 取得条件の基準 | 面積の上限(連邦法に基づく原則) | 面積の上限(追加の必要性が証明された場合) |
| 純床面積(生活可能な部屋の面積) | 200平方メートル | 250平方メートル |
| 敷地面積(対象不動産の総面積) | 1000平方メートル | 1500平方メートル |
これらの基準は一律に適用されるわけではなく、例外的に上限を超える面積の取得が認められる場合もありますが、そのためには特別な事情を証明する詳細な要件を満たす必要があります。また、連邦政府が「国家的利益に合致する」と判断した場合に限り、認可要件が完全に免除される例外規定も存在します。しかし、この免除が認められるハードルは極めて高く、対象となるのは、政治的、経済的、科学的、社会的、あるいは文化的な利益にとって極めて重要な公益的意義がある案件のみとされています。単なる特定地域の雇用創出や局所的な経済効果といった「地域的な利益」だけでは、免除の対象にはなりません。
この厳格な運用を示す実例として、ビュルゲンシュトック・リゾートの開発案件が挙げられます。同リゾートを運営する企業が、計画中のレジデンスの販売はスイスの国家的利益に合致するとして、連邦政府にレックス・コラーの認可義務の免除申請を行いました。しかし、スイス連邦政府は2023年11月29日、当該レジデンスの販売がスイス全体の国家的利益と見なすほどの重要性を有していないと判断し、この申請を正式に却下しました。この結果、同社は通常の手続きに従い、個別の認可要件を満たすかどうかの審査を受けなければならなくなりました。この事例は、連邦法の例外規定に依存する事業計画のリスクの高さを示しています。
参考:BJ(連邦司法・警察省)|ビュルゲンシュトック・リゾートに関するレックス・コラー適用免除申請の却下(2023年12月1日付プレスリリース)
カントン法に基づく別荘取得規制と運用状況の調査
レックス・コラーの枠組みそのものは連邦法によって規定されていますが、その執行と認可権限は、不動産が所在する各カントン当局に一次的に委ねられています。各カントンは、取引が認可要件を満たすかを審査するための認可当局、苦情申し立て機関、および上訴機関を個別に設置する義務を負っています。そのため、事業用不動産の取得プロセスや審査のスピードは、進出先のカントンによって大きく異なります。
中でも差異が大きいのが、観光業や保養地に関連する不動産開発や別荘(セカンドハウス)の取得です。連邦政府は、過度な開発を防ぐためにスイス全土で「年間最大1500件」という別荘取得の認可枠の上限を設けており、観光の重要性や開発計画を考慮して各カントンにクオータ(割当)を分配しています。しかし、この割り当てられた枠組みの中でどのような制限を課すかは、カントンおよび基礎自治体の裁量に完全に委ねられています。
特定の地域では、別荘の取得に対する認可が全面的に禁止されていたり、マンションの取得に限定されていたりする場合があります。また、スイスに居住していない外国人が、個人的に深い経済的、科学的、または文化的な結びつきがあることを理由として例外的に別荘を取得できる制度は、特定の一部のカントン(チューリッヒ、バーゼル・シュタット、グラウビュンデン、ヴォーなど)においてのみ導入されています。さらに、カントン法や条例によって、「取得した別荘を第三者に賃貸してはならない」「セカンドハウスとして利用しなくなった場合は2年以内に売却しなければならない」といった厳格な利用条件が付されることが一般的です。また、法人名義での別荘取得は認められず、自然人のみによる取得に制限されるという規制もあります。
これに加えて、スイス全土の住民投票で可決されたセカンドハウス制限イニシアチブにより、連邦法に基づき各基礎自治体における別荘の割合は全住居の20パーセントに制限されています。これらの複合的な規制により、不動産ビジネスを展開する際には、対象となるカントンの認可枠の空き状況、基礎自治体の条例、そしてカントン当局の裁量基準を網羅的に調査することが不可欠です。
参考:BJ(連邦司法・警察省)|外国人による不動産取得(Lex Koller)
スイスの労働法制におけるカントン法と連邦法の抵触と法的調査
連邦レベルの労働規制とカントンによる祝日・休日設定の差異
労働法制の分野でも、連邦法とカントン法の二重構造による影響が大きく現れます。スイスにおける労働契約は債務法(OR)を基盤としていますが、労働者の健康保護、労働時間の制限、深夜労働、および休日労働といった強行法規は、主に連邦労働法(ArG)によって厳格に規定されています。日本の労働基準法が全国一律の基準を提供しているのと同様に、連邦労働法も全土に適用されますが、深夜や日曜日などの労働条件に関しては日本より厳しい規制が設けられています。
しかし、労働法制におけるスイス特有の複雑さは、「祝日・休日」の扱いに関するカントンごとの差異にあります。日本においては、法律によって全国統一の祝日が定められており、どの地域で事業を展開しても休日は同じです。これに対し、スイスにおいて連邦法で定められた全土共通の祝日は、実質的に8月1日の建国記念日のみです。その他の祝日(例えば、イースター月曜日、キリスト昇天祭、聖霊降臨祭の月曜日など)を法定休日として設定する権限は、各カントンに委ねられています。連邦労働法は、連邦の祝日である8月1日に加えて、カントンが年間最大8日までの祝日を日曜日と同等の法的扱い(労働原則禁止)とすることを認めており、合計で最大9日が日曜日と同様の扱いとなります。
このため、進出先のカントンによって、8月1日以外の祝日の日数や具体的な日付が異なるという事態が発生します。複数のカントンにまたがって店舗網や流通網を展開する企業は、拠点ごとに異なる祝日カレンダーを管理し、それに基づいたシフト作成や割増賃金の支払い体制を構築しなければなりません。もし日曜日やカントンが指定した祝日に従業員を労働させる場合、あるいは深夜労働を命じる場合には、連邦法が定める「労働禁止原則に対する例外」として、管轄するカントン当局から法的な労働認可を事前に取得する必要があります。
さらに、短期滞在の従業員や外国人労働者をスイス国内で勤務させる際の手続きにおいてもカントン当局への対応が求められます。就労開始の1日前までに、従業員の個人情報や就労場所、深夜労働・休日労働の有無などをカントン当局に対して正確に通知する義務が課されており、この手続きを怠ると労働法違反として厳しい制裁の対象となります。
参考:SECO(経済担当庁)|労働時間・休暇・祝日に関する解説(独語版)
スイス連邦最高裁判所判例に見る労働者保護と営業規制のバランス
労働者の保護と企業の経済活動の自由のバランスを巡っては、連邦労働法による一律の規制と、各カントンが独自に設ける条例や規制との間で法的な衝突が生じることがあります。企業は、事業活動を行うにあたって「カントンの規制をクリアしたからといって、直ちに連邦法上も適法とはならない」という点に留意する必要があります。このカントン法と連邦法の抵触関係を如実に示すのが、スイス連邦最高裁判所によって下された重要な判例群です。
代表的な事例として、1999年11月16日にスイス連邦最高裁判所(II. öffentlichrechtliche Abteilung)によって判決が下された、チューリッヒカントンにおける特定区域の日曜営業許可に関する事案(BGE 125 I 431)があります。当事者は、チューリッヒ中央駅等の近隣で事業を営む小売業者や労働者らと、チューリッヒカントン当局です。
事案の背景として、チューリッヒカントンは休業日法を改正し、公共交通機関の拠点であるチューリッヒ中央駅やシュターデルホーフェン駅の地下・連絡通路に位置する一部の店舗に限り、日曜日や祝日を含む毎日の午前6時から午後8時までの営業を全面的に許可する特例規定(§ 8a RuhetagsG)を設けました。これに対して、特例区域の周辺で店舗を構える同業他社や労働者側が、「連邦労働法が定める日曜労働の原則禁止規定(Art. 18 Abs. 1 ArG)を潜脱するものであり、同じ顧客層をターゲットとする周辺店舗との間で競争の歪曲を生じさせ、平等原則および営業の自由に違反する」として憲法訴願を提起しました。
連邦最高裁判所は、この憲法訴願を棄却し、チューリッヒカントンの条例改正を適法と判断しました。その根拠として、最高裁判所は「カントン法が店舗という空間の物理的な営業(開店)を許可すること」と、「企業が連邦労働法に基づいて従業員を日曜日に就労させることが合法であること」は、全く別次元の法的な問題であると判示しました。すなわち、カントン法が日曜日の店舗営業を許可したとしても、連邦労働法が適用されなくなるわけではなく、事業者は依然として連邦労働法の厳格な例外要件(緊急性や必要性など)を個別に満たさなければ、従業員を働かせることはできません。したがって、カントン法自体は連邦労働法を無効にするものではなく、両者は並存可能であるとされました。
さらに、競争の歪曲に関する主張についても、裁判所は次の2点を指摘しました。第一に、駅構内という立地は「旅行者や公共交通機関の利用者に対する継続的なサービスの提供」という客観的かつ合理的な公益性を有していること。第二に、店舗の大部分が地下にあるため、市街地の路面店で一斉に日曜営業を解禁する場合と比較して、地域社会の日曜日の平穏を損なう程度が低いことです。その結果、連邦最高裁判所は、この規制緩和を公益と近隣事業者の不利益とを衡量した上で憲法上許容される範囲内であると判断しました。
この判例は、連邦レベルの労働者保護(人的規制)と、カントンレベルの営業日・営業時間規制(空間的・物理的規制)という二重構造が独立して機能していることを示しています。企業がスイスで小売業や飲食業、サービス業を展開するにあたっては、カントンの店舗営業ライセンスを取得するだけでなく、それとは別途に連邦労働法に基づく人員の就労要件を精査し、双方向からの法的調査に基づく適切な就業規則を策定することが要求されます。
参考:BGer(スイス連邦最高裁判所)|BGE 125 I 431(Ladenöffnungszeiten Zürich事件)
環境保護規制におけるカントン法の広範な裁量とスイスでのリーガルリサーチ

連邦法の目標設定とカントンによる独自の執行・課税権
企業活動が環境に与える影響に対する法規制においても、連邦とカントンの間には明確な役割分担が存在します。日本の環境法令に基づく枠組みでは、国が詳細な排出基準や環境基準を定め、都道府県や市区町村がそれを全国一律に近い形で運用しつつ、部分的に上乗せ条例を制定するという性質が強いと言えます。これに対し、スイスにおける環境法制は、カントンが有する広範な執行の裁量権と財政的な自律性が際立っています。
スイス連邦環境保護法をはじめとする12の連邦法および74の条例によって、連邦政府は環境保護の基本的な目標と国家レベルの枠組みを定義しています。しかし、その実践的な執行と法律の適用の大半は、各カントン当局が直接の責任を負っています。遺伝子技術の取り扱いや、廃棄物の国家間輸出入、連邦鉄道・空港などの大規模な国家インフラに関連する分野については連邦政府が直接規制と監督を行いますが、一般的な産業廃棄物の処理、水質および土壌汚染の防止策、大気汚染基準の運用といった日常的な企業活動に直結する環境規制については、カントンの独自の条例や行政基準に基づく運用がなされます。
カントンは法執行のために独自の財源を確保し、指導要領を設計することが可能です。また、化学物質の漏洩や火災といった災害防止や緊急対応においても、カントンが対策部門を調整し、報告機関を指定する権限を持っています。事業者は異常事態が発生した際には、直ちに指定されたカントンの機関に報告する法的義務を負い、その初動対応や行政的ペナルティはカントンの運用に左右されます。建築物のエネルギー消費や気候変動対策の推進についても、連邦憲法第89条(特に第4項)によってカントンに特別な責任が付与されており、製造拠点やデータセンターの設立を計画する企業は、対象カントンの環境執行機関が求める高い環境基準やエネルギー効率基準を事前に把握しておく必要があります。
環境課税に関する判例とスイス進出企業に求められる法的調査
カントンの強力な裁量権と財政的自律性が企業に及ぼす影響を示す重要な判例として、1999年10月15日にスイス連邦最高裁判所(II. öffentlichrechtliche Abteilung)によって判決が下された、ベルンカントンの廃棄物処理への独自課税に関する事案(BGE 125 I 449)が存在します。当事者は、ベルンカントン内で原子炉廃棄物埋立地を運営する企業(Deponie Teuftal AG)と、ベルンカントン当局(Bau-, Verkehrs- und Energiedirektion des Kantons Bern 等)です。
ベルンカントンは独自の廃棄物法に基づき、カントン内における将来の廃棄物処理施設の建設や拡張、および廃棄物管理業務の財源を確保することを目的とした「廃棄物基金」を設立しました。そして、この基金を維持するために、ごみ焼却施設や埋立地の運営企業に対して、施設へ搬入される廃棄物1トンあたり最高30スイスフラン(ごみ焼却施設)または最高45スイスフラン(埋立地)という独自の「廃棄物税(Abfallabgabe)」を課す条例を制定・運用していました。この条例に基づき、運営企業に対して1997年度分として約288万スイスフランの課税処分が下されました。
企業側は、この独自の廃棄物税は連邦が排他的に管轄し徴収する付加価値税(VAT)との「類似の税」にあたり、同一の取引に対する二重課税を禁じた連邦憲法(Art. 41ter Abs. 2 BV)に違反すると主張しました。また、連邦環境保護法が定める「汚染者負担の原則」に照らして、企業はすでに連邦基準に基づく処理費用を支払っており、カントンが将来のインフラ整備のための準備金を現行の企業に負担させることは法的根拠に欠けると訴え、憲法訴願を提起しました。
しかし、連邦最高裁判所はこの訴えを退け、ベルンカントンの廃棄物税の合法性を支持しました。裁判所は、付加価値税が「経済的価値のある財やサービスの提供に対して価格に上乗せされる消費税」であるのに対し、ベルンカントンの廃棄物税は「廃棄物という負の価値を持つものに対する処分の対価として、物理的な重量を基準として課される処分賦課金(Entsorgungsabgabe)」であり、両者の課税根拠は根本的に異なるため憲法違反には当たらないと判示しました。
さらに、連邦環境保護法はカントンに対して廃棄物処理の実行義務と費用負担メカニズムの構築を求めており、これに伴う広範な立法の裁量権をカントンに認めていると指摘しました。汚染者負担の原則についても、個々の排出者が厳密に自らの排出分のみを個別に負担しなければならないという硬直的な概念ではなく、行政効率の観点から概算的な費用配分や一括課税方式を採用すること、さらには将来的な施設の刷新や建設に向けた準備金を基金として構築することをカントンに許容していると結論付けました。
この判決は、環境保護分野においてカントンが連邦法に反しない範囲で独自の基金創設や課税権を行使できることを示しています。日本企業がスイスに進出する際には、不動産価格や法人税率の比較検討だけでなく、各カントンが独自に導入している環境税の有無や処理費用の構造まで踏み込んだ調査が必要です。
参考:BGer(スイス連邦最高裁判所)|BGE 125 I 449(Deponie Teuftal AG事件)
まとめ
スイスでのビジネスを展開するためには、連邦法とカントン法が交錯する二重構造を正確に把握した上でのリーガルリサーチが欠かせません。日本の法制とは異なり、スイスでは不動産の取得制限(レックス・コラー)から、祝日・休日の取り扱い、さらには環境保全に伴う行政手続きやカントン独自の課税に至るまで、カントンごとの自治権に基づく地域固有の法規制が企業の経済活動に影響を及ぼします。事業の適法性を確保し、予期せぬ法的制裁やレピュテーションリスク、事業計画の遅延を防ぐためには、現地の法令やスイス連邦最高裁判所の判例動向を把握し、個別の要件に対する実践的な対応策を構築することが求められます。
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